産総研トップへ

企業の声:日本地下水開発株式会社

取材日:2015年2月16日

被災地企業のシーズ支援事業インタビュー

日本地下水開発株式会社
常務取締役 桂木 聖彦様

担当研究者:再生可能エネルギー研究センター
地中熱チーム
研究チーム長 内田 洋平

産総研の膨大なデータと研究者の方の知見を活用 

シーズ支援プログラムをどのようにして知りましたか?

日本地下水開発株式会社:
私どもの会社で2011年から3年間、環境省の地球温暖化対策の事業をやっていまして、そのメンバーで、当時、つくばの産総研地下水利用研究チームにいらした内田さん、吉岡さんと3年間継続する形で共同研究をしていました。今回、内田さんの方からシーズ支援プログラムが出来たということで、トライしませんか?とお声掛けいただいた訳です。

応募すると決めて、再生可能エネルギーに関しての取り組みは変わりましたか?

日本地下水開発株式会社:
今年(2015年)で弊社は53周年ですが、基本的に再生可能エネルギーに関しては、ずっと携わって来ていますので、より深く研究できたというか、メニューが増えたという形になりました。

シーズ支援プログラムに参加された感想を聞かせて下さい。

日本地下水開発株式会社:
私どもの会社は以前から地下水をいろんな形で扱っています。地下水の持っているエネルギーを利用した消融雪システムですとか、温泉も地下水と考えると資源開発の中の温泉だとか、地下水のエネルギーを利用する様々なシステムを開発しているんですが、今回のシーズ支援プログラムでは、地下水そのものは取り出さないで、地下水の持っているエネルギーだけを使って冷暖房ができないか?という非常に面白い研究をさせて頂いています。

FREAの研究者への印象は、どうですか?
一般的には、お付き合いしにくいというイメージがあるかと思うのですがどうでしたか?
(かつ、産総研は、ハードルが高いというイメージもあるかと思うのですが。)

日本地下水開発株式会社:
私どもが一緒に研究させて頂いている研究者の方々は、まったくそういったことはないですね。

ただ、産総研さんという組織に対してはハードルが高いというイメージは、すごくありました。

実際に内田さんとお付き合いさせて頂くようになってからは、まったくそういう組織ではないのかなと感じています。「おもしろい研究してるね」という話から入っていったので、地下水という部分では、お互い通じ合える部分が非常にありました。多分、私どもの会社でも研究開発を行っていたからだと思います。

自分のところで、研究開発もせず、産総研さんにおんぶに抱っこというスタンスでは、こういう関係は、まったく生まれなかったと思います。

今後支援プログラムを応募したいと思っている会社さんへのメッセージがあればお願いします。

日本地下水開発株式会社:
何でもいいと思うのですが、産総研さんは、日本で一番大きなシンクタンク的な機能を持った研究機関なので、例えば、自分のところで作っている機器に対する研究をやっていらっしゃるのであれば、それに対して協力していただくという形がいいと思いますね。それがないと話のとっかかりが出来ないのかなと思います。シーズがあるかどうかが大きいと思いますし、実際に研究していることが重要だと思います。

一般向けに、産総研と研究したことを公表していますか?

日本地下水開発株式会社:
産総研さんと研究した!と常に言っています。すごくブランディングに役立っていると思います。 産総研さんはすばらしい組織だし、そこと一緒にやれるということは、私どもの技術を評価していただけることに繋がるので、産総研さんがパートナーとして選んでいる会社なんですねと言っていただけるということは、ブランディング的には、非常に効果的です!

応募は、複数回できますが、また応募しますか?

日本地下水開発株式会社:
今年また新しい応募をすでにしています。再度、応募するにあたり要求される部分もしっかりありますし、今までと同じ研究では絶対に採択されません。今までやっている研究にプラスアルファがないと採択して頂けませんから、そこは、逆に応募する会社が努力してるかどうかという話になってくると思うんです。

御社の研究者のモチベーションになっている面はありますか?

日本地下水開発株式会社:
すごくなります!産総研さんの研究者の方と研究出来るということで、社内の活性化になっていますし、 はっきり言って私どもの会社にとっては、良いことばかりです!

このプログラムの改善ポイントはありますか?

日本地下水開発株式会社:
今回のシーズ事業に関しては、わたくしども産総研さんと一緒に事業をするということで共同研究者になるんですね。そういう場合、自分の会社に発注できないというところが大変でした。 最初は、自分のところで全部やれると思っていたのですが、井戸を掘るときに他に井戸を掘れる会社に依頼することになった。今回、困ったのは、その部分です!

(産総研注)
当時、共同研究者への利益相反の関係から、役務についても共同研究者に単独随意契約で発注することを控えていた。現在は「共同研究規程」「利益相反マネジメントポリシー」および「利益相反マネジメントガイドライン」により発注に関するルールが明確化されている。

今回のプロジェクトに携わっているのは何人ぐらいですか?

日本地下水開発株式会社:
実際、会社の中で担当しているのは、1人ですけれども、実際施設を作る際に、担当者以外4、5人は携わっていました。

今後、決まりそうなお仕事は、何かありますか?

日本地下水開発株式会社:
今までに産総研さんと研究していたものは、もうすでに事業化しています。今回のものは、まだですが、将来的に事業化できればいいなと思っています。でもそんなに先の話ではないと思います。

今回の研究は、日本全国で使えます。例えば、今お話ししているこの部屋の冷暖房の熱源は地下水なんです!会社の前に井戸が3本掘ってあるんですけど、一本の井戸から400リットルの地下水をくみ上げて、だいたい15〜16度の地下水から5度ほど熱を頂いて、ヒートポンプという機械で熱を回収して温かいお湯を作り、そのお湯を回して温風が出ているんです。使い終わった地下水は、他の井戸から地下に還元してリサイクル環境を作り出しています。このような地下水の持つ熱エネルギーを使った冷暖房システムは海外ではもっと進んでいます。 今、ヨーロッパでは、オランダ、スウェーデンは、非常にこういう施設は普及しています。

私どもは、元々井戸を掘る能力があるんですが、日本中のどういったところに適した地下水があってとかいう知見がない。産総研さんは、そういうデータを山のように持っていらっしゃるので、私どものやっているノウハウと、産総研さんのノウハウを絡み合わせると、日本全国でどういう地域であれば、こういうシステムが適用できるかとかが、だんだん明らかになって来ています。こういったシステムを使えば、一般的な従来型の冷暖房に比べて経費を抑えることができますし、CO排出量も半分ぐらいに抑えられます。そういった意味では、非常に将来的には有望なシステムだと、私どもは思っています。

地球にやさしいわけですね。

日本地下水開発株式会社:
産総研さんのFREAというところは、まさにそういうこと具体的にを研究する施設だと思いますのでお互いそういった意味では、いい研究ができると思っています。

もっとこのようなプログラムがあることを広めた方がいいですね。

日本地下水開発株式会社:
それは、本当ににそう思います!でも今回のFREA(シーズ事業)に限ったことではなく、国の補助金事業もそうなんですが、結構、募集期間が短いですね。何も知らない方が急にこんなシステムあるよと聞かされて2週間で書類出せと言われても、それは大変だと思います。そこは、事前に関係性を作って情報を少しでも引き出せるような努力をした方がいいと思いました。

日本は、地下のエネルギーの宝庫ですよね?それを利用しない手はないですよね?

日本地下水開発株式会社:
実際のところ結構ハードルが高いんですが、ハードルが高いからこそ研究が必要なんです。日本の温泉文化と地下水を利用したクリーンエネルギーの共存共栄はその中でも大きな課題の一つになります。

岩手県松川温泉では、昔から地熱発電をやっているんですが、そこで出た熱を温泉地に提供して、松川温泉という温泉が成り立っているんです。温泉とは、まったく違う熱源を温泉地に提供しているという共存の例になります。その他にも様々な形が考えられると思いますが、その形を作るためにも産総研さんの膨大なデータと研究者の方の知見を活用させて頂く必要があると思っています。

国立研究開発法人 産業技術総合研究所