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企業の声:株式会社亀山鉄工所

取材日:2017年2月1日

被災地企業のシーズ支援事業インタビュー

株式会社亀山鉄工所
取締役 企画室長 平川 章様

担当研究者:再生可能エネルギー研究センター
エネルギーネットワークチーム
テクニカルスタッフ 河澄 あかね

自社製品の再エネ活用への新たなチャレンジ

自社製品の再エネ活用への新たなチャレンジ シーズ事業をどのようにお知りになりましたか。
また、応募された理由をお聞かせください。

株式会社亀山鉄工所:
ENEX2013という展示会で温度成層式の蓄熱貯湯システム(亀山貯蔵:かめやまためぞう)を出展していた際に産総研の前田研究員がブースにお越しになり、産総研で福島に再生可能エネルギーの研究開発施設の設立、被災地3県の企業を支援するための事業が行われるとの紹介がありました。後日、どのような支援を受けられるかを相談させていただき、(展示していた「蓄熱貯湯システムの性能評価」をテーマとして)応募させていただきました。

弊所研究者に技術的な支援を受けた効果、感想をお聞かせください。

株式会社亀山鉄工所:
お客様に商品を知っていただく上で定量的データはどうしても必要なものですが、研究開発用の設備や計測機器の確保などが必要となるため、中小企業では限られた資金面でその対応が難しいです。シーズ支援プログラムに参加して弊社の温度成層式貯湯槽の省エネ性を定量的に評価して頂けたことは非常に効果が大きく、ありがたかったです。
応募前、産総研はハイレベルな研究機関で、中小企業には近づきがたい印象がありましたが、実際に支援をいただいて実験をしていく中で、様々な情報やアドバイスをいただくことができ、とてもいい支援制度でした。

産総研と一緒に共同研究を行うことで、御社内の研究開発の活動や体制、意識などに何か変化はありましたか。

株式会社亀山鉄工所:
最初は、産総研の高度な研究レベルに触れさせていただいて基礎技術力の高さや、様々な大手企業と共同研究を行っているということで、我々とはレベルの差が大きく、敷居が高いと思っていました。
しかし、色々研究で関わっていく中で、我々のような中小企業でも産総研と一緒に研究活動が出来る、これまで難しいと思っていたものが、やってみると自社でもある程度出来るという自覚ができて、それに伴って社内の意識も変わっていきました。社員の意識の変化を踏まえ、平成26年度に技術開発室という研究開発専門の部署を立ち上げました。支援を受けたことで、社員のモチベーションがアップし、社内の活性化に非常に刺激になりました。(支援プログラムに応募するという)アクションを起こしてよかったと肌で感じています。

支援で行った、御社の製品評価の方法や得られた結果はいかがでしたでしょうか。

株式会社亀山鉄工所:
平成25年度のプログラムでは期待通りの結果(省エネ効果の定量的評価)が出せ非常に満足しています。さらに、産総研で行った「実証評価試験」と使用状況が同じであれば、設備容量も15%小さくできるという効果も合わせて確認ができたことが、予想以上の成果となりました。
平成26~28年度のプログラムでは、25年度と違って実験設備工事の遅れや予期せぬ不具合により予想していたようなデータが得られなかったために、思うように進まなかったというのが正直な感想です。それは弊社だけで解決できる部分と産総研側で対応、解決してもらわないと出来ないことと両方あったという感想を持っています。これらの要因を分析し、チャレンジを継続している状況です。

高効率蓄熱貯湯ユニット

技術的な指導、助言について、御社の事業、開発に役立ちましたか。

株式会社亀山鉄工所:
弊社としても産総研が作っている性能評価結果などを含むPR資料(成果報告用パンフレット)などを活用して、カタログやパンフレットに使って配っています。産総研の信頼性の高い評価・データをPR資料として実際に使って、建築設計事務所、設備施工会社、直接のユーザーであるお客様に色んな形でPRしているのが現状です。産総研との共同実験でやらせていただいていることが、会社のイメージアップに非常につながっていると言えると思います。

技術的支援を受けた技術シーズについて、現状の課題と今後の展望についてお聞かせください。

株式会社亀山鉄工所:
現状の課題は(太陽熱の)集熱温度を下げても集熱効果が期待していた数値までいかないということです。実証実験では、一回ですんなり良い結果が得られるとは限らないので、試行錯誤をしながら行う必要があります。そのため実証実験が長期にはなっていますが、改善点を見つけながら一つひとつ課題を解決して、実用化につなげていきたいです。

事業化、実用化に向けた課題に対して御社が産総研に期待する支援を教えてください。

株式会社亀山鉄工所:
(実用化に向けて)良いデータが得られるまで試行錯誤をしながら繰り返し実証実験を行っていきたいと思っています。その過程で、得られた結果に対するアドバイスや、実証用の実験装置の設計変更や組み換えなどについて、助言、指導をお願いしたいです。

当事業についての意見や改善点または魅力など教えてください。

株式会社亀山鉄工所:
国レベルの研究機関と共同研究できるということ、さらに実証試験で良い評価結果が得られた場合は、「(産総研による)お墨付き」という意味でも、業界、お客様であるユーザーに対するPR、アピールの効果が大きく、(被災地企業のシーズ支援プログラムによる)産総研との連携には魅力があります。

御社で他に公的な支援制度を活用されたことはありますか。

株式会社亀山鉄工所:
これまでに、宮城県など自治体の補助金や経済産業省などの委託研究など様々な公的支援制度を活用してきました。最近は、廃熱を回収、蓄熱して有効利用するというテーマでJSTの事業に参加しています。

東日本大震災の後、御社での新しい取り組みはございますか。

株式会社亀山鉄工所:
工場などでの高温の排ガスなど、無駄に捨てられていて未利用の廃熱を有効活用できる蓄熱の研究を行っています。熱が捨てられている場所と時間、必要としている場所と時間の違い、ずれが原因で未利用となっている廃熱について、蓄熱技術を活用することで、有効利用しようと考えています。今後も、環境に貢献するテーマや公共性の高いテーマに取り組んでいきたいと考えています。

産総研又はFREAに望むこと、期待することはありますか。

株式会社亀山鉄工所:
新たに環境性の高いテーマに取り組む際にアドバイスをいただきたいです。採択が決定してから実験設備が整うまでの期間が非常に長く、実質的な実験期間が短くなってしまうという問題がありました。特に、再生可能エネルギーは季節性もあり、太陽熱については、夏季の間(6~8月ごろ)に十分なデータを取る必要がありましたが、準備に時間がかかり、(実証試験の)計画に大きな影響が出てしまいました。実験設備の速やかな導入など、試験ができる期間をできるだけ確保できるよう支援をお願いします。

これは今後の支援に関する要望ですが、計画した実験を進めていく過程で、当初の計画と違う方がより良い成果が得られると思うことがあります。そのようなときに、(企業側で対応できない部分について、)産総研の支援内容、計画を柔軟に見直していただけるとありがたいです。

今後、再エネの技術を活用したいと考えている(が、まだ踏み出せていない)企業の方へのメッセージをお願いします。

株式会社亀山鉄工所:
このような支援制度を知らない企業もあると思います。我々も産総研研究員から声を掛けていただくまでは自社には直接関係ない支援制度かなと思っていました。中小企業は産総研とレベルも違うと考えてしまうと、なかなか踏み出せない面があると思います。

産総研では、会社のニーズ、レベルに合わせて支援や相談を受けていただけるので、技術面で課題がある会社はまず産総研に声をかけてみて、窓口のコーディネータに相談をしてみる、一歩踏み出してみることが重要だと思います。

これまでの支援状況

蓄エネルギー分野
  • 「温度成層式蓄熱・貯湯システム」の実証評価(平成25年度)
  • 『太陽熱利用給湯システム』の最適制御手法の開発(平成26年度)
  • 『太陽熱集熱パネル』と『補助熱源機器』併用運転時の最適運転制御手法の開発(平成27年度)
  • 予熱槽併用型太陽熱利用給湯システムの最適運転制御手法の開発(平成28年度)
国立研究開発法人 産業技術総合研究所