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企業の声:ジオシステム株式会社

取材日:2017年2月8日

被災地企業のシーズ支援事業インタビュー

ジオシステム株式会社
代表取締役 高杉 真司様
舘野 正之様

担当研究者:再生可能エネルギー研究センター
地中熱チーム
研究チーム長 内田 洋平

産総研の知見から事業化へ直結

シーズ事業をどのようにお知りになりましたか。また、応募された理由をお聞かせください。

ジオシステム株式会社:
平成25年度に産総研の研究員の方から本プログラム(当時は「被災地企業の技術シーズ評価事業」)をご紹介頂いたのがきっかけでした。岩手県に事業所を構えていたことから、応募資格があると教えていただきました。

今後の自社の事業化、製品化にプラスになるテーマと考えて、平成25年度は株式会社福島地下開発さん(平成27年度の支援企業)のご協力を得て、地中熱用の熱交換器の改良をテーマに応募しました。支援を受けたシーズは、自社だけでは技術的に対応しきれない課題であったので、共同研究で支援を受けできたことは非常にありがたかった。
また、産総研との共同研究を通じて実証した技術であることは、今後の仕事の受注に当たって顧客の信頼感を得やすくなると期待しました。

弊所研究者に技術的な支援を受けた効果、感想をお聞かせください。

ジオシステム株式会社:
本事業に携わって頂いた研究者の方々は、課題に対して親身にアドバイスをしてくださった。また、事業を実施していることを産総研のホームページ、新聞報道、成果報告会などで発表して頂き、弊社の知名度向上に貢献して頂いた。これは研究の実績もさることながら、(社員5人の小さい会社ですので、自社単独での対外的なアピールには限界があり、)他の会社と仕事をするときに認めていただけるということで、広報として非常にありがたかった。

産総研と一緒に共同研究を行うことで、御社内の研究開発の活動や体制、意識などに何か変化はありましたか。

ジオシステム株式会社:
業務を行っていく中で、これまでは、業務の中で常に持っていた技術的な課題に対して、次のシーズ支援の対象に取り上げられそうな新しい技術につながらないか、漠然とした開発ではなく、目標を設定してそれに向けて研究を仕上げていくというように意識が変わった気がします。産総研の支援(試験評価の環境整備)により、資金、環境面で安心して研究を進めることができました。実用化に向けた可能性が広がったこともあり、社員の開発意欲が高まりました。

支援で行った、御社の製品評価の方法や得られた結果はいかがでしたでしょうか。

ジオシステム株式会社:
課題である「地下水移流効果を有効利用した高効率地中熱交換器」については、考案した熱交換器が高効率であることを本事業で確認できました。また、自社技術である設置仕様を決定するための深度別熱伝導率調査法が有効であることも再確認できました。地中熱に関するコンサルティング業務を行っている弊社としては、技術力を認めて頂けることは、民間企業からの受注において信頼感を持って頂けるので、非常にありがたい。

技術的には完成に近いが、実地に投入してお客様に満足していただけるようにしたいです。技術的な達成度は100%。事業化に向けては、コスト、地中熱システム全体でまだ課題があり、達成度は50%ほどです。

産総研の支援に関連して、事業化に向けた具体的な成果について教えてください。

ジオシステム株式会社:
シーズ事業を契機に、特許出願した「地中熱熱交換装置」は、特許第5779206号として平成27年7月17日に登録されました。

他にも、本事業での技術をベースに、株式会社福島地下開発さんとともに平成27年度に福島県の補助事業で熱交換器の設置コストの低減技術の開発を実施し、事業化後、実際の注文を受けた際の検討課題となりうる、複数の熱交換井を配置する際の留意点について知見を得ることができました。この際にも産総研の研究員の方の技術協力を頂きました。

地下水を利用した高効率地中熱交換器の運転の様子

技術的支援を受けた技術シーズについて、現状(の課題)と今後の取り組みや展望をお聞かせください。

ジオシステム株式会社:
本シーズは地下水流動が速い地域でボアホール型熱交換器の性能を向上するものであり、ある程度技術的には成熟したと考えており、次は実地への投入(製品レベルでの実証)と考えています。その際には、システム全体の経済性を重視し、自社施工での売り上げに貢献できるように検討を強化しています。

事業化に向けて残っている課題に対して期待する支援を教えてください。産総研に期待する支援とは?要望は?

ジオシステム株式会社:
技術的にはものになってきているので、今後は、営業面で努力が必要と考えていますが、我々だけでは不安が残る部分です。そもそも地中熱利用システムへの一般のユーザーの理解が不可欠で、それがないと販売に結びつきません。
我々の技術シーズを使った製品は、地下で水が多く流れている地域で特に効果を発揮する地中熱利用システムですので、福島県などで導入を進めていくためには、設計会社や一般ユーザーにも理解しやすい地下水流動による移流を考慮した地中熱システムの導入適地マップ(ポテンシャルマップ)が必要と考えています。このような基盤情報については、FREAを中心に検討、公表をこれまで以上に、進めて頂きたい。

当事業についての意見や改善点または魅力など教えてください。

ジオシステム株式会社:
(あえて申し上げさせて頂きますと、)地中熱は現場での実証実験を行う必要があり、事業の採択決定から実際に現地試験開始までの期間が半年ほどかかるため、単年度では十分なデータに基づく評価をできない状況です。データは季節で変わるものなので、最低でも1年間以上継続的にデータの取得や検証を行うことが望ましく、(春夏のデータが不足するため)単年度で計画を立てることは苦しい。(一応、翌年度のテーマ内で継続的な試験、測定等を支援して頂いている部分はありますが、)複数年度での支援も取り扱って頂けるとありがたい。

御社での公的支援制度の活用実績を教えてください。

ジオシステム株式会社:
公的支援としては、平成27年度に本事業での技術をベースに、熱交換器の設置コストの低減技術の開発を株式会社福島地下開発さんとともに福島県の補助事業で実施しました。

委託研究として、NEDOの「再生可能エネルギー熱利用技術開発/地中熱利用トータルシステムの高効率化技術開発及び規格化/地中熱・流水熱利用型クローズドシステム技術開発」、農林水産省の「食料生産地域再生のための先端技術展開事業に係る研究」において、地中熱システムの研究開発を実施しています。その他に、大学との共同研究なども進めています。

東日本大震災の後、御社で新たに取組んでいることはありますか?

ジオシステム株式会社:
FREAが開所したこと、シーズ事業で支援を頂いたご縁も有り、平成27年度に郡山市内に出張所を開設し、地域密着の営業活動を開始しました。また、この出張所開設により、来年度から立ち上げが決まっている地中熱に関する福島県内での有限責任事業組合(LLP)に参加する方向で検討が始まりました。

産総研又はFREAに望むこと、期待することはありますか?

ジオシステム株式会社:

  1. 地中熱システムの導入適地マップ(ポテンシャルマップ)が必要と考えています。このような基盤情報については、FREAを中心に検討、公表を今後も進めて頂きたい。
  2. 技術関係で分からないことがあった際はまた相談に乗ってもらいたいです。
  3. また、産総研の研究者に公的な委員会活動などを通じて、地中熱分野の業界のまとめ役としてご活躍いただきたい。

今後、再エネの技術を活用したいと考えている(が、まだ踏み出せていない)企業の方へのメッセージをお願いします。

ジオシステム株式会社:
いろいろな中小企業がシーズを持っており、それを育てていくことができれば被災地の復興への大きな成果になると思います。自分たちでは、ある程度方向性が固まっているけれども、実績が無い、技術的にあと一歩など、中々相談しにくいことがあると思いますが、本事業などを通じて、技術的な課題解決や評価、検証に産総研の研究者の方々が助力して下さいます。

また、関連性のある技術であれば、当社のような先行して支援を受けている企業と連携することでお手伝いできることもあると思います。産総研に一度ご相談されることをお勧めいたします。また、我々の成果が応援メッセージになればと思っています。

これまでの支援状況

地熱・地中熱分野
  • 地下水移流効果を有効利用した高効率地中熱交換器の評価(平成25年度、平成26年度)
  • 地中熱ヒートポンプシステム配管の高度化ならびに断熱効果の検証(平成27年度)
  • 樹脂製細管熱交換器を内蔵したタンク式地中熱交換器の有効性の検証(平成28年度)
国立研究開発法人 産業技術総合研究所