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研究者の声:熱海 良輔

被災地企業のシーズ支援事業インタビュー

熱海 良輔
再生可能エネルギー研究センター
水素キャリアチーム 研究員

支援企業:北芝電機株式会社様

違った視点で技術や製品を見ることで、新しい知見や思想が生まれることも

Q1.支援先企業への貢献

どのような側面でFREAが、地域の支援先企業のお役に立てたと感じますか?


熱海:
今回の熱交換器設計の技術開発では、まず水素エネルギーシステムの全体像を考慮したピンチ解析を行いました。この解析方法は化学プラントではスタンダードなものではありますが、現在も研究の対象となっている手法です。当チームで行ったピンチ解析の様に、学術的な側面から支援先企業のシーズ技術が有するポテンシャルを評価し、また改善点を提案させて頂いたことは、国立研究所であるFREAならではの貢献の仕方であると考えております。

また、今後予定しております熱交換器への水素流通試験など、実験方法が確立されておらず、十分な注意を払って行う試験は、企業で実施するにはハードルが高いものです。そうした実験を行うこともFREAの意義であると思います。

Q2.参加のメリット

実用化に近い企業の開発に協力することで、研究者として得られた知見はありますか?


熱海:
多くの研究者・技術者は、熱交換器は既に確立した技術であるという認識を持っていると思います。私も当初はそうした思いでした。しかし、いざ実用スケールの熱交換器試験に取り組んだ時、確立していた技術は化学プラントの様な大型プロセスでのものであり、水素を用いる分散型発電施設規模での設計・運転方法は確立していないということに気付かされました。技術や製品に対する見方を変えることで、知財化できそうなアイディアが出てくるようになりました。

研究者は、技術者とはまた少し違った視点で技術や製品を見ると思います。そうした経験からまた新しい知見や発想が生まれることもありますので、FREAと参加企業の両者にメリットがあると思います。

Q3.産総研に技術支援を希望する地域企業へのアドバイス

研究者として、企業から相談を受ける際に、適切な支援ができるように、自身が心掛けている点、企業側にお願いしたい点は何ですか?


熱海:
シーズ技術の多くが、たいへん素晴らしい技術の卵であります。しかし水素エネルギー社会の全体像は今も常に書き直され、要求される技術、渇望される製品は日々変化しています。次世代のエネルギー利用を真剣に考えることが、水素エネルギー市場の動向を予測することに繋がります。私は、シーズ支援の業務において、支援先企業のシーズ技術が来たる市場でどのように位置付けられるか、それを考えながら研究に励むことが重要であると信じております。また支援先企業の技術者・経営者も、次世代のエネルギーの在り方を研究者と共に討論し、水素社会のビジョンを共有することがシーズ支援において重要であると思います。

国立研究開発法人 産業技術総合研究所